【読感】本山美彦『人工知能と21世紀の資本主義 サイバー空間と新自由主義』明石書店 ほか
最近読んだコンピュータ関連本2冊の読後感を書いとこ。
まずはこのエントリータイトルにある『人工知能と21世紀の資本主義』から。
初版発行日2015年の12月25日クリスマス。著者は京大名誉教授、元・日本国際経済学会長、元・大阪産業大学学長で、世界経済論や金融モラルの確立を研究してきた学者ですと。
本のタイトルに「人工知能」とついているが、そこにはあまり多くを割かれてはいない。目次を順におよそ、労働者のおかれた(不利な)状況、ラッダイト運動当時との比較とか、IT業界の問題点や業界内・企業内の内部抗争、SNS等ネットサービスの問題点、新自由主義のイデオロギー、人工知能開発の歴史的経緯やビッグデータの問題、コンピュータによる証券取引の問題点、NSAとファイブアイズとアメリカ巨大IT企業の陰謀vsリベラル・サイファーパンク、ビットコインの可能性、等々。多くの哲学者や社会学者が懸念や批判する部分と重なりますかね。エンジニアはインサイダーで利害関係がありますので、このような巨視的視点をほとんど口にしませんね。口封じされてるのか企業や国家機密に抵触するのか保身か状況が分かってないレベルなのか知らんけど。
あとがきで著者自身が自分は偏狭なナショナリストなんだろうか?と締めくくっている。トランプの保守主義とか行き過ぎたグローバル化への抑制とかまたはブロック経済みたいな方向への懸念とか問題視される中において、どのようにバランス取って上手に制御できるか。ドンパチだけは勘弁願いたいものです。
(追記 そういえばこの本、シオニストのユダヤ人とナチスの共謀(「シオニストユダヤがナチスを歓迎」と)に言及している。こういう事を言うとたいがい陰謀論だとバカにされるが。シオニズムと中東に楔を打ちたい欧米人とユダヤ人を追い出し問題を片付けたい派などの利害が一致して結託していたのだろう。)
もう一冊は新井紀子『AI vs 教科書を読めない子どもたち』東洋経済新報社。
一番引っ掛かったのは現在の国のAI研究予算の少なさの部分。AIだけじゃなく全ての科学と学術に対してそうなんだろうけど。予算が少ない理由の1つとして、かつて通産省による国家プロジェクト5世代コンピュータの失敗があって、その総括を調べようにも記録が存在していなくて参考できないんだという箇所。日本的ですよね。まさにいま安倍腐敗政権が連続で隠蔽改竄やり散らかしてるのと同じで日本的伝統ですよ。戦後の日帝の悪行を隠蔽したのよりずっと以前からの。弁証法みたく回りながらも前進しようという西洋的発想ではなくで、円環で失敗を繰り返すべくして失敗やらかす日本的伝統。
本の真ん中までは数学者の立場からシンギュラリティは起こらないとか東ロボくんの開発話し、AI発展の現状や展望が書かれてあり面白いとは思う。数学自体が不備・発展途上なので、数学を応用するAIやIT、コンピュータ技術も可能性としてかなり限界があるんだと。だがしかしそれでも雇用破壊は起こるだろうとして、その対策の1つとして後半の子どもの読解力低下や教育の話しに移ってディスりまくる。ぶっちゃけ数学とAI技術を主題にした方が全然面白いものになったのではないか。
で、後半。日本語の文法が英語なんかと比べて難しいんですよね。主語なのか目的語なのかとか文脈から判断しないと全然分からないような構造でも行けるようになってたりする。薩摩弁が難しいのはスパイを炙り出す部外者対策の為にわざわざそうしたのだという話があるけども、日本語の文法もひょっとしてそんな意図を踏まえた発達があったのではと思ったり。そんなわけでこの本の主題となっている、読解力の単純比較がどれ程意味があるのかはちょっと疑問。読解力をつければ雇用破壊からどれだけ逃れられるのかもよく分からんのでそこまで重要視されるべき問題なのかも疑問。話題の割には不満の残る一冊。(シオニストユダヤ人がナチスを歓迎=共謀、と読み替える読解力の無さよ)